| 小長井 一男, 工博 |
東京大学名誉教授国際斜面災害研究機構 学術代表 日建設計シビル 技術アドバイザー Phone: 090-1040-1271 e-mail: kaz3776k@gmail.com, konagai@iclhq.org リサーチマップ:https://researchmap.jp/konagai_kaz_2792/ 東京大学大学院教育学研究科の平島雅也助教(当時)野崎大地教授が,「軽微な忘却は運動指令を最適化する」と最新の研究成果について 2012年6月29日の東大での記者会見で語っておられます。 忘却というと、人間のネガティブな一面と受け止められがちですが、 ひょっとしたら、忘却は人間がポジティブに生きていくために根源的に 備わっている“心の安全装置”なのかもしれません。 ふとギリシャ神話の黄泉の国にあって、その水を飲むとすべてを 忘れてしまう“忘却の川レーテ(Lethe)”を思い出します。 しかしながら私たち地震工学・防災工学に関わる者はこの忘却という 人間の本性に抗ってつらい震災の記憶と向き合い、これを風化させずに 次の世代に伝えていかなければならないという、困難な宿命を 担っているのかもしれません。 振り返ってみると私はこれまで、47の被害地震の180回程の調査に 関わってきました。東大退職を機にこれらをまとめようと振り返って みたのですが、いざ整理を始めてみると自分で撮影したはずの写真の 場所も思い出せず、また覚えていたはずの大事なことまで忘れている ことに愕然といたしました。一方でこの作業の中で、私のこれまでの 努力の少なからぬ部分が、地形に残された地震痕跡を残すことに 傾けられていたことに思い至りました。海外の地震被害の調査では 地震記録すらなく、地形に残されたメッセージを読み解くことが 数少ないできることの一つとだからでした。 地盤は磁気テープのような履歴材料です。したがって過去の 自然災害の痕跡を明瞭に残している場合が少なからずあります。 これらを定量的なデータとして集約し、重要な教訓として後世に 伝えることは、国や地方自治体が、その限られた人的・物的資源を 防災に振り向けるうえで重要な情報になると感じています。 今後一層この方面の研究に精進していきたいと考えています。 (2019年3月) |